風についての考察その5 集落のあり方

  今年はこの地に住む人たちを驚かせるほどの雨が降り、水庫(貯水池)には満々と水が蓄えられています。少しの雨水でさえ無駄にしないで利用しようとしていることが分かります。しかしこんなことは生まれて初めて経験したと古老が言うように、非常に珍しいことのようです。

  この地の、風が強く水が少ないと言う自然環境は、人々の生活に決定的な影響を与えています。まず集落のあり方はおしなべて、南下がりの斜面の窪地に沿って存在しています。その様にして風をさけ、水を確保しようとしていることが理解できます。現在は雨水を貯水し、また、海水を淡水化することもされており、さらには、水のない時には、ほぼ毎週台湾からタンカーで水を運んできているので、昔の人がどれほど生きることに苦労をしたかを知るよしもありませんが、これらの設備のなかった時代にここで生きるのは容易でなかったことはすぐにも想像できます。 ましてや、コーラーやジュースはもとより、ペットボトルに入ったミネラルウォーターがどこでも手に入り、市内の至る所には特別な浄化処理を施された水が自動販売機で売られていると、この島のかつての戦いを忘れてしまいます。試しに水道の水を飲んでみましたが、少し塩辛い感じがします。塩分が抜き切れていないのではないかと思われます。

  日本統治の時代に銀合歓(豆科の植物)を植えることが奨励され、今では全島がこの植物で埋め尽くされています。(戦後であると言う説もあります。いずれにせよ土着の植物ではなく、どこかから意図的に持ち込んだもののようです。)

  それで4月の半ばから11月の中旬まで、この銀合歓の鮮やかな緑がこの島を覆います。この木は亜熱帯では常緑であると思われますが、昨日ある山(丘のようなものですが)を見ましたら、山の半分は色が変わっていました。東北の風の当たる部分にある銀合歓が葉を落とし冬支度をしていました。12月になると全島が灰色の世界に覆われます。私の心も既に灰色です。大好きな澎湖島の夏が終わるのです。

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